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Think SNOW

~ 良い行動習慣をつけるために ~
雪崩事故にはヒューマン・ファクターが深く関わっているため、意思決定に影響を与えるバイアスを最小化するために、日々、基本に沿った行動を取ることで、良い行動習慣を身につけることが極めて重要です。虫歯を防ぐための良い行動習慣である就寝前の歯磨きが身に付いている人は、小さい頃、親からの日々の躾が効いているのかも知れません。それと同様に、たとえば「休憩する際は、必ず、雪崩地形を外す」という行動を日々行い、良い癖をつけることが雪崩事故を小さくするには大切です。

「Think SNOW」とは、2005/06シーズンにスタートした、4つの簡単な問いを使うことで、良い行動習慣を身につけるための試みです。何人もの人が巻き込まれ、被害甚大となる雪崩事故は、雪崩地形と行動マネジメントのマッチングが悪い場合がほとんどです。Think SNOWのシンプルな問いを使うことで、そのような大規模な事故を防ぐことができるようになるでしょう。

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問1 あなたは、今、どこにいますか?
「地形認識」のための問いです。休憩する時、仲間とルートを検討するために止まる時、テントの設営場所を考える時、仲間の滑りを見守る時、登行ルートを検討する際など、常に、この問いを最初に発してください。「雪崩地形」の認識が安全対策には、なによりも重要です。過去に雪崩があったか否かではなく、いくつかの着眼点を使い、地形を注意深く観察すれば、雪山の経験が浅い人でも雪崩地形を認識することは可能です。

もし、あなたが雪崩地形内にいれば、潜在的に雪崩ハザードに曝されている=リスクがある状態になります。リスクマネジメントの基本は、ハザードに曝される「時間と量」のコントロールですから、雪崩地形内に入る時間や人数を減らすことが極めて重要です。よって、可能な限り雪崩地形を避けて登行する、仲間と適切な間隔を空けるなどの行動様式の大切さが強調されているのです。


問2 大丈夫と判断した理由は何ですか?
「積雪状態」についての問いです。積雪が、既に不安定な状態であることを明瞭に示す「直接証拠」と呼ばれる情報があります。真新しい雪崩、シューティングクラック、ワッフ音、スキーカットの結果などです。また、短期間での大量降雪、継続的な強風、短時間での急激な気温上昇などの「強い気象現象」は、必ず、積雪を不安定な方向へ動かす極めて重要な情報です。これらを軽視しないこと、そして見逃さないでください。

残念ながら多くの雪崩事故は、明快に不安定性を示唆する情報が現れている時に起きています。人は意外と、大事なことを見ているようで見ていないものなのです。それゆえ、日々、直接証拠や強い気象現象などの重要性を認識する必要があります。2013/14シーズンに開始したTwitterによる雪崩の写真と動画の情報共有は、直接証拠の重要性をより理解していただくための側面もあります。


問3 もし雪崩れたら、何が起こりますか?
「結末」についての問いです。積雪コンディションの評価は、不完全で偏りのあるデータに基づくため、常に不確実性を併せ持ちます。私たちは、容易に誤りを犯すことを自覚する必要があり、それゆえ、雪崩が発生した場合、その結末として、何が起こるのかを考える必要があります。ここでも、雪崩地形の認識と行動マネジメントが鍵となります。ある斜面に何人も同時に滑り込むのか、あるいは原則的な行動様式である一人ずつにするのかで、その結末は大きく異なります。

もし、目の前に広がる斜面が大きいのならば、発生しうる雪崩のポテンシャルも上がります。斜面内に点在する灌木には積雪を支える効果はなく、流された人への凶器となるだけです。また、小さい雪崩であっても被害を大きくする「地形の罠」を見逃さないようにしてください。斜面入口は広く緩やかでも、その先が狭まっている漏斗状地形、周囲から雪が集まる沢状地形、斜面下方にある樹林や障害物あるいは崖などが典型です。さらに、自分の上方に位置する発生区の存在についても見逃さないように。


問4 他に選択肢はありますか?
「リスク許容」についての問いです。雪崩に限らず、事故が発生する時は、選択肢がなくなっていることが多いものです。たとえば、進むしかない選択肢がない、といった状況です。それゆえ、常に、複数の選択肢が取れるような行動を考えることが大切です。たとえば、A・B・Cと3つの選択肢があった場合、Aが正しく、Bが誤り、といった単純化した見方はせず、選択肢それぞれで、どのような危険要素があるのか、具体的に考え、比較してください。

地形認識を深め、積雪状態の把握についてゆっくりと経験を積むに従い、複数の選択肢それぞれについて、より具体的な危険要素が見えてくるようになるでしょう。危険要素が判然としない場合は、地形を使って安全のマージンを大きく取る、あるいは「回れ右」をすることです。引き返すことも、最初から入れておくべき選択肢の一つです。


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