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雪崩の種類

雪崩は、積雪の状態で多様な姿を見せますので、発生の仕方や雪の乾き具合などで整理します。ここでは、通常よく利用されている「一般的な区分」と、JANが発表する雪崩情報で用いられている「留意すべき雪崩」について、それぞれ概説します。

一般的な区分

雪崩は、一般的に以下の6つの言葉の組み合わせで表現します。例えば、点発生乾雪表層雪崩、面発生乾雪表層雪崩、面発生湿雪全層雪崩などが典型的な例となります。

点発生と面発生

発生の際、ある一点から始まるか、ある範囲が面として動き出すのかで分けます。スラブ(板状の性格を持った雪層)が形成されていれば、面発生になります。

乾雪と湿雪

雪崩れるが乾いているのか、濡れているのかの違いです。濡れているとは、雪粒の周囲に水が存在していることを意味します。

表層雪崩と全層雪崩

積雪の雪面に近い上層が雪崩れるものと、積雪の底から積雪すべてが流れるものに分けます。全層の場合、地面などが露出します。

また、これらに含まれない種類もあります。例えば、完全に水に浸された雪が流下するスラッシュなどがです。

留意すべき雪崩

JANの雪崩情報で使用されている「留意すべき雪崩」について概説します。この「留意すべき雪崩」は、山岳地の雪崩コンディションをより具体的に伝えることを目的として整理されています。以下の7つの雪崩タイプについては、北米の雪崩情報の現場で働くプロフェッショナルによって組織されたADFAR2委員会(Avalanche Decision making For Advanced Recreationalist 2)において検討・提案されているものと同一です。

点発生雪崩

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「留意すべき雪崩」の区分における点発生雪崩は、結合力が弱い乾雪で発生する雪崩を指します。この雪崩は、木や岩からの落雪、滑走者が飛ばした雪などが、きっかけになることもありますし、降雪の最中に発生することもあります。点発生雪崩には以下のような特徴があります。

・一点から砂山が崩れるように発生
・結合力の弱い雪で発生
・周囲の雪を巻き込みながら大きくなる
・雪崩は扇型になる傾向がある
・比較的小規模の場合が多い

一般的に、点発生雪崩が起こる時は、低温で風が弱く、低密度の雪が積もった場合です。このとき積雪はスラブの性格を持っていませんので、樹林の積雪を支える効果も弱くなり、斜度が十分にある疎林内でも点発生雪崩は発生します。斜度は少なくとも35度、一般的には40度以上の傾斜が必要となります。

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点発生雪崩であっても、地形の罠が組み合わさることで雪崩リスクは増大します。

湿雪雪崩

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「留意すべき雪崩」の区分における湿雪雪崩には、点発生と面発生の二種類の雪崩が含まれています。いずれも積雪が濡れた湿雪で発生します。

点発生湿雪雪崩は、乾雪と同様に小規模なものが一般的ですが、積雪表層が十分に濡れている状態ですと、高い密度も相まって破壊力のある規模の大きなものも発生します。また、雪粒同士の結合力が弱いので、斜度が十分にあれば林間でも発生します。 面発生湿雪雪崩は、スラブの下にある弱層あるいは境界面が濡れる、あるいは水で浸されることで、雪の結合力が落ち発生します。スラブは通常、硬く締まっているか、あるいは強固な状態にありますが、一端、雪崩が発生すると、それらは砕かれ、丸みを帯びた雪塊となり流下します。雪崩の速度は、乾雪の雪崩よりも遅く、地形形状に沿うように流れますが、高い密度を持っているため破壊力は強大です。

夜間を通して0℃以上の気温、強い日射やまとまった降雨は、湿雪雪崩に関係する典型的な気象状況です。また、真新しい面発生湿雪雪崩は、類似した斜面の危険を考える上でとても良い指標となります。

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まとまった降雨の後などは、積雪層がすべて雪崩れる面発生湿雪全層雪崩も起こります。

ストームスラブ

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ストームスラブによる雪崩は、まとまった降雪があった時に発生します。一般的な区分では、面発生乾雪表層雪崩になります。ストームスラブは、降雪がもたらした新雪内あるいは以前の雪(旧雪)との境界面に、弱層あるいはウイークインターフェイスを持ちます。この雪崩は、他の種類のものと比べ、しばしばとても軟らかいスラブからなり、これが人々の危険認知を誤らせています。また、ストームスラブは誘発した人の足元から切れる傾向があります。

多くの場合、ストームスラブの脆弱性は、降雪中の気象状況の変化(降雪強度、気温、風など)に起因します。例えば、穏やかに積もった低密度の雪の上に、気温上昇や風の影響を受けた高密度の雪が載ることで形成する“逆構造”は、典型的な荒天による不安定性です。一方、変化の少ない気象状況での降雪の場合、ストームスラブによる不安定性は生じにくくなる傾向があります。

ストームスラブによる不安定性は、一般的に、降雪中と降雪直後に顕著で、降雪が止まって24時間から36時間以内に安定化へ向かう傾向があります。安定化の進行速度には、気温が大きく寄与しており、低温の場合、安定化するには時間を要します。

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まとまった降雪は、降雪時の気象状況によりストームスラブによる不安定性を持つことがあります。

ウィンドスラブ

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ウインドスラブによる雪崩は、風によって雪が再配分されることで形成された板状の積雪層が、弱層あるいはウイークインターフェイスの上に載ることでもたらされます。風で雪面を転がる雪は、砕かれ、小さな粒子となり、再堆積する際に、密度の高いスラブを作ります。ウインドスラブによる雪崩は、一般的な区分では面発生乾雪表層雪崩になります。

風によって再配分された雪は粒子が細かく、密に押し固められるため、風の影響を受けずに積もった雪よりも速やかに焼結が進みます。そして、しばしば急激な焼結の進行により、焼結の過程で割れやすい性質を持ちます。しかし、ウインドスラブも時間が経ち十分に焼結が進むことによって、その強度を上げ安定化していきます。一般的に、数日で安定化する傾向があり、その速度は温度の影響を強く受けます。

ウインドスラブの形成は、風速と風の継続時間、そして移動可能な雪の量などで変わります。風の影響が小さければ、稜線の風下側に小さいスラブを形成するだけかもしれませんが、その影響が大きい時は、風下側の沢状地形内にもウインドスラブが形成することがしばしばあります。また、主稜線を越えて吹く風だけではなく、支尾根を横から巻くようにして吹く風でのスラブの形成にも留意する必要があります。さらに、一般的には安全な場所と思われている森林帯でも、木がまばらとなり、風が通るような場所には局所的にウインドスラブが形成しますのでウインドスラブによる雪崩は、風によって雪が再配分されることで形成された板状の積雪層が、弱層あるいはウイークインターフェイスの上に載ることでもたらされます。風で雪面を転がる雪は、砕かれ、小さな粒子となり、再堆積する際に、密度の高いスラブを作ります。ウインドスラブによる雪崩は、一般的な区分では面発生乾雪表層雪崩になります。

風によって再配分された雪は粒子が細かく、密に押し固められるため、風の影響を受けずに積もった雪よりも速やかに焼結が進みます。そして、しばしば急激な焼結の進行により、焼結の過程で割れやすい性質を持ちます。しかし、ウインドスラブも時間が経ち十分に焼結が進むことによって、その強度を上げ安定化していきます。一般的に、数日で安定化する傾向があり、その速度は温度の影響を強く受けます。

ウインドスラブの形成は、風速と風の継続時間、そして移動可能な雪の量などで変わります。風の影響が小さければ、稜線の風下側に小さいスラブを形成するだけかもしれませんが、その影響が大きい時は、風下側の沢状地形内にもウインドスラブが形成することがしばしばあります。また、主稜線を越えて吹く風だけではなく、支尾根を横から巻くようにして吹く風でのスラブの形成にも留意する必要があります。さらに、一般的には安全な場所と思われている森林帯でも、木がまばらとなり、風が通るような場所には局所的にウインドスラブが形成しますので、強い気象イベントの直後には、そのような場所にも注意を向ける必要があります。

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積雪の浅い稜線付近にもウインドスラブは形成されます。

持続型スラブ

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持続型スラブによる雪崩は、スラブの下に持続型の弱層が存在し、それが脆弱性の原因となるものを指します。こしもざらめ雪、しもざらめ雪、表面霜といった脆弱性が長く持続する弱層が下部に存在することで、誘発可能な状態が長期間継続することが特徴です。持続型スラブによる雪崩は、一般的な区分では面発生乾雪表層雪崩になります。

持続型スラブは、その初期段階においては簡単に雪崩を発生させる状態にありますが、その規模は限定的になる傾向があります。そして、スラブが続く降雪で厚みを増すと、弱層は相対的に深い位置に埋まり、誘発しにくい状態になっていきます。これは誘発した際に、スラブの破断が遠くまで伝播し、規模が大きくなることを意味します。持続型スラブによる不安定性の最終段階では、誘発はとても難しい状態になります。しかし、雪崩を発生させる可能性を保持したまま、危険が継続していることに変わりありません。この段階で発生する雪崩は、支尾根など地形変化をまたいで広範囲に広がる可能性があります。

持続型スラブによる不安定性が存在する場合、離れた位置からの誘発(リモートトリガー)は一般的です。たとえ平坦な場所であっても、それはしばしば起こります。また、雪崩活動が観察されないことは、この不安定性が持つ潜在的危険性が改善していることを保証しません。持続型スラブは、しばしば比較的短い期間に活発な活動を見せた後、その活動が観察されない休止期間を併せ持ちます。休止期間は一般的に穏やかな気象と関係しており、気象が大きく変化すると、しばしば、その活動が突然目覚めることとなります。

持続型スラブは、すべての標高帯で一般的に生じえます。そして、寒冷な気候でなおかつ風の影響を受けず、さらに上載積雪による圧密の効果が小さいところならば、低い標高帯であっても長期間、その不安定性が持続している可能性があることを考慮する必要があります。

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2010年3月の熊野岳・蔵王沢の雪崩事故は、融解凍結層と持続型弱層がセットになった持続型スラブによる雪崩でした。

ディープスラブ

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ディープスラブによる雪崩は、厚く硬いスラブの下に持続型の弱層が存在し、それが脆弱性の原因となっているものを指します。弱層の位置は、しばしば積雪底面の地表に近い位置に存在します。それゆえ、スラブは焼結が進み、硬くしっかりしていますので、これが発生の際に雪崩規模が大きくなる原因となります。一般的な区分では、面発生乾雪表層雪崩になります。

ディープスラブをもたらす持続型弱層は、一般的にシーズン初期、良く晴れた寒冷な気象状況に積雪が曝されることで、その表層で形成され、その後の降雪で深く埋没します。また、降雨による融解凍結層とセットになった持続型弱層もディープスラブによる雪崩をもたらす代表例です。この場合、硬い融解凍結層の存在が、より破壊の伝播をもたらす役目を果たします。

ディープスラブはすべての方位において形成しえますが、それが形成しやすい特定の地形的特徴はありません。しかしながら、雪崩活動は、それが分布する地形によって多様な姿を見せます。つまり、ある山域や特定の山岳、斜面、標高、あるいは方位など、特定の場所にのみ問題が存在し、隣接する山域や特定の山岳、斜面、標高、あるいは方位には、それが存在しないことがあります。

積雪が深く均一に堆積しており、穏やかな天候の場合、ディープスラブの誘発にはかなり大きな刺激(強力な爆発物や大きな雪庇など)を必要とします。浅い位置にある弱層から小さい雪崩が起こり、それが深い位置の弱層を刺激することでディープスラブの雪崩が発生することは一般的です。このようなステップダウンによる発生だけでなく、問題となる弱層が浅い位置に存在する積雪の薄い場所を刺激することで誘発するリモートトリガーもよくあります。

ディープスラブによる雪崩の予測は、とても困難な面を持ち、一端、発生すると破壊的な規模となります。気象が大きく変化する時や春の訪れは、しばしばディープスラブの活動を目覚めさせ、そして、その活動が活発な期間では小さい刺激でも誘発は起こります。

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2000年2月に発生した八方尾根ガラガラ沢の雪崩事故はディープスラブによるもので、積雪の薄い箇所で誘発されました。

雪庇崩落

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雪庇の崩落は、しばしば風で移動した大量の雪が堆積する際に発生します。それゆえ、風が吹いている時の降雪や、積雪表層に移動可能な軟らかい雪が必要です。雪庇の崩落は、雪粒の結合強度が上がる前、すなわち形成中と形成直後が一般的ですが、急な地形に形成したものや懸垂するような大規模な雪庇は、形成後かなり時間をおいてから崩落することもあります。

雪庇が発達する典型的な気象状況は、相対的に暖かい気温での降雪があり、同時に風がModerateの強度で一定しつつ継続的に吹いた場合です。この時、雪は雪面を移動しやすい上に互いの結合も素早く進みます。

雪庇は、標高が高く、風に曝されることの多い主稜線や支尾根の風下側で形成することが一般的ですが、地形的に急激な変化がある場所であれば、どのような標高帯でも形成します。行動中に雪面に残された風による積雪表層の雪の移動跡を発見した場合、それは雪庇形成の可能性を示唆します。

風に曝される稜線において、雪面から露出している岩や薄い積雪から、より均一な厚みのある積雪に移行している場所は、そこは既に地形的に安全な所から外れており、雪庇の上に乗っている可能性があります。

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雪庇は形成直後にとても脆い期間が存在します。